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2017年1月15日 (日)

第41回:胸を切り裂く痛みに満ちた青春文学の傑作!『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(桜庭一樹)

「その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない『あるもの』を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは徐々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝(さら)されており、ある日--」

 

今では1月の第2月曜が「成人の日」ですが、1999年までは今日、1月15日がそうでした(国が連休を増やそうとしたハッピーマンデー制度によるもの)。

それにちなんで、前回の『GOSICK』に続いて2週連続の登場になりますが、「早く大人になりたい」と願う中学生の女の子に訪れた、一人の友達との出会いと別れを通じての、痛みに満ちた成長を描いた桜庭一樹さんの傑作、

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を取り上げたいと思います!

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               左は富士見書房版(入手困難)右は角川文庫版

 

 

「ぼく、お父さんのこと、すごく好きなんだ。好きって絶望だよね

お話の舞台になるのは鳥取県の片田舎。主人公の山田なぎさは中学2年生、複雑な家庭環境もあり、「早く大人になりたい。中学を卒業したら自衛隊に入り、社会に出たい」と強く願う、リアリストな女の子です。 

そんな中学生にしては冷めた少女であるなぎさの前に現れたのが、東京から彼女の通う中学に転校してきた謎の少女・海野藻屑。

名前からしてすでに相当変ですが、自分のことを「人魚」と言い張り、奇矯な言動を繰り返す彼女に、最初は有名なスターの娘&美少女な彼女に興味津々だった周囲もドン引き。あっという間に浮いた存在になってしまいます。

もちろんなぎさも関わり合いなど持ちたくないのですが、何故か妙に懐かれてしまい、散々に振り回されてしまう結果に。最初はうんざりし通しのなぎさなのですが、それでも次第に親交を深めていく中、やがて彼女は藻屑の隠し持った秘密に気付いていきます。

そう、彼女は実は父親によって、日常的に虐待を受けていたのです……! 

それをあくまで「愛情表現」と称し、父親を庇うような言動をとる藻屑ですが、虐待は日に日にエスカレート。見かねたなぎさは何とか彼女を救うべく、必死に動き回るのですが、しかしいくらしっかりしていても彼女はまだあくまで「子ども」にすぎず、そしてついに事態は最悪の展開へ--

 

これはネタバレも何も、最初のページに書いてあることなので言ってしまうのですが、最終的には藻屑は死んでしまいます。しかも非常に残酷かつショッキングな形で(これ富士見書房版の可愛い表紙に惹かれて読んだ人は驚いたろうなぁ(^_^;))

なので、読者は最初から藻屑を待ち受ける悲惨な運命を知った上で、どうしてその事件が起こってしまったのか、そして海野藻屑とはどんな少女だったのかを、なぎさの視点を通じて追体験していくことになり(そもそもお話自身が、事件現場に向かうなぎさの回想という形で描かれています)、そのため、余計に胸をえぐられるような深い哀しみを、物語から感じざるを得ないのです。

 

「砂糖菓子でできた弾丸では子供は世界と戦えない」

「戦友」とも言えるかけがえのない友達との出会いと、あまりにも悲しすぎる別れ--深い喪失と無力感に打ちのめされながら、子どもから大人へと成長していく少女の姿を描いた、青春小説の大傑作です。長さもたった180Pちょっとですし、ぜひ多くの中高生、特に女の子に読んで欲しいです。

 

なお、少女漫画版もあるのですが、原作が短いだけに上・下巻できれいにまとまっています。こちらで読むのもお薦めですが、ただクライマックスはビジュアル化されると、やっぱりかなりショックを受けちゃうかも……(^_^;)

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PS

なお、最近はこのネタは「サイコパス診断」的な感じでけっこう有名になったのですが、作中に登場する「答えられたらヤバイクイズ」にはドキッとさせられたなぁ。ちなみにこんな問題で、藻屑のお父さんはこれに即答できちゃうんだよね……

「ある男が死んだ。つまらない事故でね。男には妻と子供がいた。葬式に男の同僚が参列した。同僚と妻はこんなときになんだけどいい雰囲気になった。まぁ惹かれあうってやつだ。ところがその夜、なんと男の忘れ形見である子供が殺された。犯人は妻だった。自分の子供を突然殺したんだ。さて、なぜでしょう?」

ちなみに答えは、「一言で答えられ」「ひらがなでも漢字でも五文字」です。

まぁわからない方がいいんですけどね!(;´_`;)(苦笑) 

 

PS2

同じく「児童虐待」をテーマにした作品としては、以前紹介した『砕け散るところを見せてあげる』(竹宮ゆゆこ)もお薦めです。こちらはどちらかというと男子向け!

5
http://shujisensei.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-44ae.html

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